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有明海の不作はなぜ起きた 50年に一度の記録的不作についてまとめてみた 【中編】|創業100年の老舗海苔店四代目の海苔生産地訪問記

海苔生産地訪問記

 

有明海の不作はなぜ起きた 50年に一度の記録的不作についてまとめてみた 【中編】|創業100年の老舗海苔店四代目の海苔生産地訪問記

 

㊁伊藤海苔店、四代目 信吾です。

前編に引き続きまして、海苔の記録的不作について執筆していきます。

<<前編はこちらから

 

秋芽海苔からあまり状況は芳しくなかった有明海の海苔漁のスタートでしたが、海苔漁師の皆さんや海苔商社も関係者は皆、「例年通り1月からの冷凍網で挽回できるだろう」と考えていたかと思います。

2023年1月6・7・8日と福岡と佐賀、熊本で海苔入札会がありました。

大体12月中頃から終わり頃に製造された海苔で、栄養も少し回復に向かっていたので中には良い御海苔が生産できた漁場もあったようですがそれもごく一部だったようでした。

「少し怪しくなってきたな…」
と私は考え、この結果が出た時には有明海に出向いての状況把握に向けて準備をし始めました。

1月27日から4日間予定。

佐賀空港から入り、佐賀・福岡・熊本の3県を廻り、阿蘇熊本空港から東京に戻る予定を組みました。

ちょうど九州入りする3日前の24日から26日にかけて、記録的な暴風・低温の寒波となり、強烈な時化(しけ)となったのを受けて、海上に設置している海苔の支柱や網が被害を受けた。という状況もあり、更に状況は悪化したように見えてとても心配な日々でした。

参考リンク
2023年2月16日配信 産経新聞「ノリ養殖施設の被害3億円 1月末の暴風で」
※リンク切れの可能性もございます、ご了承ください。

 

1月27日、夜の佐賀空港に着きまして、レンタカーが予約できていないで空港にひとり取り残されるというプチトラブルに見舞われながらも無事宿泊地の柳川に到着しました。

ここからは有明海の主要生産地である佐賀・福岡そして次章で熊本に分けて海苔の生産について少し綴ってまいります。

 


 

 

佐賀県の海苔生産

 

2日目の朝から海岸沿いを走り、まず伺ったのは佐賀県川副町という港町でした。
ちょうど降り立った佐賀空港の目の前あたりが漁場です。

川副町の中には早津江(はやつえ)・大詫間(おおたくま)・南川副(みなみかわぞえ)・広江(ひろえ)の4つの支所があります。この4つの支所と諸富(もろとみ)という支所は筑後川・早津江川が流れ込む、栄養豊かな海苔が獲れる評価の特に高い浜であると私は先代から教わってきました。
これらの地域は佐賀県の東側にあたる地域です。



戸ケ里港南側の漁港内には海苔船がたくさん停泊していた

15の支所で構成されているのが佐賀県有明海漁業協同組合。他の海苔生産地が地域に単協毎に組織することが多いのですが、佐賀県は県全体で漁協という形をとり、それぞれの地域に支所を置くという組織です。
海苔の種である糸状体の培養を行う「ノリ糸状体培養場」は県内に7つあり佐賀県有明水産振興センターと連携し、地域で海苔育成に効率的に取り組んでらっしゃいます。

川副町の漁師さんたちは、先日の暴風の影響で被害を受けた海上の養殖施設を修復している様子でした。

「暴風でも思ったより被害はなかった。知ってると思うけど海に栄養がなくて海苔の色も黒くならないんだよね。多少養殖施設は被害を受けたけど、これだけ時化れば海が掻き回れたからここからの回復に期待しているよ」と海岸沿いにいらっしゃった漁師さんにお話しを聞くと前向きにこれからの状況を捉えてらっしゃいました。

また今回の海苔の色落ちの理由は、2022年10月からの少雨の影響と、赤潮の発生によって増殖したプランクトンが海の栄養を奪ってしまったからであるということでした。



早津江川の下流あたりから海苔の養殖場を望む

漁師さんの読み通り、この後の2月以降の海苔漁は質・量ともに持ち直しました。

ですが、これも県東部地域の傾向であり、県西部である白石(しらいし)・鹿島市(かしまし)・太良(たら)などではかなりの苦戦を強いられたようです。

2023年期に佐賀県で獲れた海苔は9億820万枚で前期の46%と半分以下に減ってしまいました。

 

福岡県の海苔生産

 

有明海沿岸にかけて福岡県内の17組合で組織される福岡有明海漁業協同組合連合会。

有明海に面する大川市・柳川市・みやま市・大牟田市に在する各漁協の代表で組織される有明海の漁業に関する組織です。

海苔の培養についても福岡県ではそれぞれの漁協や企業でとても熱心に研究され、漁師さんも自身の施設で自家培養されている漁師さんがいるのが特徴で、赤ちゃんから大切に育てているようで海苔生産に対する愛情を感じます。

こちらをまとめられている福岡県有明海漁連の西田さんにまずお話しを伺い、入札場の様子も見学させていただきました。圧倒的な量の海苔箱の在庫(まだ値段が付けられていない状態)は圧巻ですが、この年の倉庫はいつもの半分以下の荷物しか動いていないとのことでした。



伺った当時の乾海苔検査速報、いつもであれば優・特が多いが四等五等の本数が多く、厳しい現状が見えた



海苔の見付場、入札時にはここで出品された海苔を見て値付けをしていく



「いつもは入札前の時期は身動きが取れないくらいの荷物量なんですよ」と西田さん

またこの日は2名の海苔漁師さんにもアポイントを取っています。

まず柳川の大和(やまと)漁協へ田中智幸さんを訪ねました。

全国の海苔生産者が集まる海苔サミットでお会いしてから交流を続けさせていただき、田中さんが東京方面にいらっしゃる際にも築地に立ち寄っていただき色々と意見交換をさせていただいております。

私と口髭の生え方が似ていることからも福岡柳川のお兄ちゃんと呼ばせていただいております。



(左)田中智幸さん、(右)私、この日は朝から少し曇り気味でしたが午後から晴れ間が見えました

 

田中さんは心和水産という企業体で海苔生産に取り組んでらっしゃいます。

ご自身の漁場の海苔だけではなく、ご高齢になり中々海苔の乾燥までできない漁師さんや後継者がいないなどで生産が難しくなってきた漁場の海苔も摘み取った生海苔を受け入れて海苔の乾燥を受け入れてらっしゃるそうです。

「今年はどうですか?」という私からの問いかけから堰を切るように、今期の状況を約2時間、雑談も交えながらお話をいただきました。

 

・培養から種付けまでは過去一番良くできたこと

・11月の秋芽から海の状況がおかしかったこと

・1月からの栄養塩不足は自然が原因だけではないこと

 

「いつもと海の色が違うんよね、小さい頃から有明海に生かされてきたから海のことはよくわかってるつもり。だけど今年の状況なんかも本来であれば海のチカラでこれくらいのことは解決できたはず。昔に比べて海の生き物が少なくなったよね。もちろん少雨や護岸工事などで川からの水自体が少なくなったのも一つの理由やけん、環境整備することを見直すことも大切。自然と共存していくこと、僕は有明海で海苔を獲らせてもらっているって思ってる。海がないと私たちは何もできん。海を守らなければいけない。」

このお話は海苔サミットで皆さんで呑んでいる時にも他の漁師さんに繰り返し話してらっしゃったのをよく覚えています。



海苔船には摘採用の小型船も載せられている



こちらは手入れされた状態だけど、先日の暴風で網がぐちゃぐちゃになっていた養殖施設もあった



回復はしてきたが少し赤みがかっているのが分かる。本来であればこの時期の海苔は真っ黒

同じ大和漁協の西田剛さんに海の上で再会!

私と同年代で積極的に若いスタッフさんと共に海苔生産に取り組んでらっしゃいます。
本格的に摘採されていたので見学させていただきました。

西田さんも海苔の色は回復傾向であるとのことでした。やはり先日の大時化が海にとっては良かったようです。



小型船で海苔の摘採を行っている様子。この時1月末、水温は14度程度。海苔漁師さんは寒さとの闘いでもある



摘採した生のりは小型船から大型船にノズルを使って送られる



タンクに溜められていく海苔。やはり少し赤みがかっているのが分かる

また以前から親交のある大川(おおかわ)のアリアケ水産、古賀さんにも尋ねました。数年前にもお伺いしており、以前よりご交流をさせていただいている海苔漁師さんのお一人です。

古賀さんと古賀さんのお父さまにお話しを伺いました。

大和の田中さんと同じように、このような事態は初めての経験であったこと。

大川漁協、全体で色落ちがあること。

またこのような事態だと、海苔漁自体を諦めて共済の保険にて売上補償手当する海苔漁師さんがいるとのことを教えていただきました。特にご高齢や小規模の事業者の方についてはそのような対応をされる可能性があると。そうすると生産量もなかなか上がらず漁連入札への出品量も増えない可能性があるとのことでした。



(左)古賀哲也さん、(右)古賀雅敏さん、大川漁協協同組合の代表理事組合長(当時)



漁協権の区画略図をもとに今期の状況を伺いました。四角く区分けされているところは陸地ではなく海上です

目に見える状況だけではなく、色々な海苔漁師さんたちのご事情について教えていただきました。

この年(2022-2023)の海苔生産は、私が伺った後の2月から3月は平年並みまで質・量ともに挽回をしたものの、必要数を賄えるほどの量ではありませんでした。

全国では 47億枚(前年比25%減少)に対し822億円の取引額。
有明海では 22億枚 と例年の半数ほどの出荷量。

それにもかかわらず、入札での取引額は変わらないどころか前年を上回っているため、平均単価は46%の上昇でした。そのため海苔の仕入れ業者にとっては頭を抱える年となりました。もちろん当社もその中の1社でした。

 


 

こちらの章は昨年の記憶を辿りながら2023年1月頃の少し前の状況を綴ってみました。
次の章では、2024年の状況と今後この状況をどうしていったら良いのか考察をしてみようと思います。

 

美味しいお海苔といえば! 築地 伊藤海苔店

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