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海苔の値上がりいつまで続く 後編2章|創業100年の老舗海苔店四代目が考える 日本の海苔の未来

日本の海苔の未来

 

海苔の値上がりいつまで続く 後編2章|創業100年の老舗海苔店四代目が考える 日本の海苔の未来

 

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訪問記 佐賀大学農学部

 

佐賀の水産振興センターに伺った後に、小降りになってきた雪の中、佐賀大学農学部で藻類の研究をされている木村准教授にお話を伺いに訪れました。

木村さんにもまずは不作の要因についてお話を伺いました。



木村圭准教授の研究室 藻類ベントス学分野という研究をされてらっしゃいます

「水産振興センターの野口さんからもお話があったかもしれないですが、気候の変動、特に冬場の少雨と赤潮が私も不作の大きな原因であると思います。」

やはり、自然の影響が色濃いのは間違いないようです。

「自然環境が変わってしまった現在を仕方がない状況としてゼロとしてみると、ここから1歩でも2歩でもうまくいくことができて色々な方々の喜ぶ顔を見たいと思い、日々研究に勤しんでいます。
なので、もともとの状態へとすべて元通りにするというのはあまりにも極論だと思いますので、少しずつプラスにしていければと思います。
佐賀大学に佐賀という名前は付いてますが、有明海もしくは全国の漁師さんのためになれば良いと思っています。
研究というのは短期的なものではなく、長期的な視点であるべきだと思っています。」

木村さんは過去に前例がない今の海の状態はもしかしたらプランクトンも自分たちが生き延びるために必死に栄養を摂ろうと考えているのかもしれないため、過去にはない状態での研究の前例がなく、今の状態をベースにそれに合った研究を未来に向けて進めなければいけないとお話されていました。

 

— 実際に日本の海苔産業の今後についてはどうお考えですか?

「韓国・中国の海苔研究されている方々の集まりで、先日韓国に呼ばれて講演に伺ったのですが、海苔のオリジナルの食文化を持っている我々日本がこれだけ生産に苦戦しているのに対し、韓国・中国は生産を加速されていたんですね。」

「例えば、空港のお土産屋さんにもずらーっと韓国海苔が並んでいるんですよね。
だけど成田空港とかで海苔って大々的に並んでないじゃないですか?日本らしい小物とかそういったのはありますけど…だから日本の伝統食である鰹節とか海苔とかって海外に持って帰っておうちで食べてくださいね、っていうアプローチというよりも内製的に消費されてきた食品なんですよね。
だけどそれも勿体無いような気もするんです、日本の海苔は物凄く美味しいですから。
プロモーションでは圧倒的に韓国には負けてしまっていると感じました。」

「韓国海苔もどんどん世界に出ていっていて、ご存じだと思いますが、海外で提供されている日本食レストランなどで使用されている海苔の大部分は日本ではなく韓国産ですよね。
日本の海苔の養殖技術はかなり高いと思います。韓国中国とは技術の違いによる品質の差別化をしていくべきだと思いますね。」



学生さんたちはこんな研究所っぽいところで黙々と作業をされてました。

— 研究を活かして、今後についてはどのように取り組んでいければ良いと思いますか?

「例えば、藻類のビタミン研究をしているんですが、海苔にはビタミンCがレモンの9倍程度含まれているんですね。
色落ちしてしまった海苔にもほぼ同様にそれは存在していて、そこからビタミンCだけを抽出するって話ではなくて、自然の天産物である海苔を例えばパウダーとして食品に添加して使ったりすれば食品添加物として扱う必要もないため、そういった新しい付加価値の創出もできるかなと思うんですね。
色落ちして廃棄せざるおえない海苔に対して、そういった新しい商品を開発するようなアイデアみたいな可能性を見出していくのが私たちの役目だと思っています。」

「あとは、海苔って植物なんで、光の具合で成長が変わるんです。光もあたり過ぎは良くないんですよね、程よく。
例えば農業で使われている遮光シートみたいな、光のコントロールみたいなこともいま研究しています。
我々大学の先生の本分は教育なので、学生たちを巻き込んで研究に取り組んでいます。
今は専門の研究を一途にやるというよりかは、共同研究をした方が良いという時代なんですね。
なんで他の大学の先生たちとコミュニケーションをとりながら人と人を繋いで、色々な視点でまとまってオープンな状態で良い将来が構築できれば良いと思っています。」



別棟の倉庫のような場所 栄養の濃度によって育ち方が変わるっていう実験の様子

「有明海の海苔って本当に美味しいじゃないですか。私は実は滋賀県生まれなんですが、昔から味付海苔ばかり食べていて、海苔の本当に美味しさに気づいたのは恥ずかしながら大人になってからでした。
それだけ日本に誇るべき美味しい海苔があるってことに気づいている人って少ないんだと思います。
だから韓国・中国の海苔とは一線を引いて考えるべきだと私は考えていまして、最高級の国産海苔として保護していくべきだと思うんですよね。」

木村先生も水産振興センターの野口さんも想いは、共通していました。

海苔漁師さん、消費者の方々が喜ぶ姿を見たいと。

このような考え方のおふたりにお話を聞けたのが今回の訪問で非常に嬉しかった。
お時間いただきまして、有難うございました。

 


 

さて、締めに向けてまとめていきます。

まず有明海の海苔の不作の原因。
これについては専門家のお二人のお話を聞けてかなり私の中で昇華することができました。

色々な要因はありますが、主には夏場の豪雨で海の生態系バランスが崩れ、冬の海苔漁期に極端な少雨の影響で、山・陸地から栄養が十分に降りてこない。赤潮も色々な要因が相まって発生頻度があがり、結果、海が貧栄養になっている。

つまり自然の要因が大きいということではないでしょうか。

そして自然には抗うことは難しいかもしれませんが、研究者さんたちが考えた技術が早く海苔の生産現場に落とし込まれて、少しでもこのような状況に海苔漁師さんが対応していければ良いな、そう思いました。

補足として番外編として諫早湾の締切についても綴りますが、これも一つの要因である可能性があるというだけで、海苔の不作の一番の大きな要因としては捉えることができないかと思います。

昨年などは瀬戸内海も同じように栄養がない状況だった時があったのですが、今年の瀬戸内海特に兵庫地域では栄養が常に潤沢で、視察に伺った3月上旬のもう終わりが見えかけている時にも真っ黒な海苔が獲れていたのには本当に驚きました。

 


 

海苔は養殖と言えども自然の影響を受ける天然産物でありますから海苔の品質は良い年もあれば悪い年もあり、焼海苔は加工食品のカテゴリではあるもののクッキーなどの均一化された味に仕上げるというのはかなり難しいということを、消費者の皆様によくご理解いただく必要があると思います。

また我々食に関わる事業者として、どんな状況下においても生産者さんたちの応援者でなければなりません。


一、取引先に無理な価格/納入期限を強いることをしてはならない
二、大変な思いで生産者さんが作ってくれたものだから食品を無駄に廃棄することはしてはならない

これらは私自身の行動指針で、常日頃からスタッフにも伝えていて、こうすることで良い循環を作り出せるのではないかと考えています。

また消費する側の消費者の皆さんにも強くお願いをしたいのですが、意識をして国産食品への回帰を図っていかないと、もちろん海苔産業についてもそうなのですが、日本の一次産業は皆共倒れの状況になると思います。

自分たちの世代だけがよければ良い、ではなく、子どもや孫の代まで、美味しい日本の海苔が食べれるように、海苔関係者だけではなく行政・水産関係者・海苔問屋がインタビューをさせていただいた研究者の方々と手を取って客観的に論理的にこのような変化に立ち向かっていくべきだと私は考えます。

未来への取り組みをされようとしている日本の農家さんや漁師さん、またそれに関わる方々の応援をしていただくような消費行動にぜひご理解をいただければと思います。

 

さいごに

 

日本政府が農林水産省への予算をどんどん縮小しているという事実はご存じでしょうか?

前編でご紹介いたしました、鈴木宣弘氏(東京大学大学院特任教授・名誉教授)の講演の中で、そのような主張がありました。1970年度は農林水産省の総予算に占める割合は11.54%でした。税額は増えたため金額は多少増えているものの、2023年度では全体の1.83%でしかなく、これはまだまだ削減傾向であるということでした。
防衛関係費については、1970年と2023年を比較すると17.9倍、厚労省については27.2倍になっています。

本当に国民に取って良い税金の使い方を考察していけば、他国から武器や機器を購入するのではなくて、輸入に頼らない国内の食糧生産の底上げをして、安定供給と備蓄ができるほどの生産力を持つことが、国防の観点からも本当に必要とされるべきものだと明白なはず。

世界的に生産終了しているオスプレイを1機200億円で日本は購入しているそうです。
これは有明海の再生に関わる予算の約2倍。

税金の使い道、本当に合ってますかね?

こういった議論が為されていないことも日本国としての根本的な在り方が今問われているのではないかと思います。

余計なことかもしれませんが、締めに当たってどうしても伝えたかったので…

 

美味しいお海苔といえば! 築地 伊藤海苔店

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