おだし
なんで海苔屋でだしパックを販売しているの?|創業100年の老舗海苔店四代目が教える 本格和風だしパック 商品開発ストーリー
㊁伊藤海苔店、四代目 信吾です。
築地店にお越しいただいているお客様でしたらご存知いただいているかと思いますが、築地店の店頭では8年ほど前から「お出汁」の試飲販売をはじめさせていただきました。
海苔屋がお出汁も販売しているの!?と最初はお客様にもびっくりされていましたが、
「ぜひ飲んでみてください!」
とおすすめして飲んでいただくと、皆さんにご納得していただけるほど美味しいんです。
四国のメーカーさんで作っていただいているだしパックでして弊社専用にお作りいただいております。
このだしパックの商品開発ストーリーについて、今回は少しお話してみたいと思います。
開発ストーリー
2015年の年明けに瀬戸内海へ視察に伺った時から、このお出汁の開発ストーリーは始まります。
兵庫県明石の海苔問屋さんにご挨拶をした足で、電車に乗り瀬戸大橋を渡り予讃線で伊予西条駅まで。愛媛県の西条市に黒海苔と青海苔の生産の視察に出向きました。帰りはまた瀬戸大橋を渡り、新幹線まで戻るのも面倒なので、せっかくなので道後温泉で少しだけゆっくりしてから空の便で帰る予定でした。
松山の道後温泉も古くからの温泉街として観光地の側面が強い街の1つ。「築地場外での運営に何か勉強になることはないかな?」と、旅行者気分で路面電車にも乗ったりして、道後温泉の商店街をウロウロ散策。
道後ハイカラ通りと呼ばれる道後商店街は、観光客や地元の人が溢れる約250mの商店街。築地に比べると少しお土産屋さんが多い。その前にやられていたご商売からお土産屋に転換されたような、そんなイメージを受けました。
また今治などで繊維業が盛んなこの地域を活かしたタオルショップや宇和島みかんのジューススタンドは今ドキの綺麗な内装で地域産品を洗練して販売されていてとても素敵でした。新しい飲食店と古いお店が新旧立ち並ぶ様子は築地のそれにも照合わさる部分が多くあり、街の変化を感じたこともとても印象的でした。
いりこを中心に瀬戸内海は海産物がとても豊富。お土産屋さんにも、海産物を販売しているお店が多く、その1つ1つを念入りにチェックしていた中で出会いました。
お出汁の試飲…
ちょうど、デモンストレーションされている店員さんがいらっしゃらなかったので、勝手にポットから少し出してちょっとだけ飲んでみました。
こういった試食・試飲系で今まで美味しかった試しがなかったのですが…
「うまっ」
と思わず、つぶやいてしまいました。
もう一口分、ポットから拝借して改めて飲んでみる。
やはり、おいしい。
「魚を中心とした味わいですでに調味されていて濃い味だから築地でも試飲で出してみたら面白いかも…」
いくつかそのお店で商品を購入させてもらいました。
帰りの飛行機でどうやって築地のお店で販売できるか、どう海苔と絡めるか、など海苔の視察に行ったにもかかわらず頭の中はこのだしパックのことでいっぱい。視察では、ばらぼし海苔(商品リンク)の仕入れでも四国に出向いていましたので、ばらぼしのスープとしてこの出汁を試飲で提供すれば海苔ともリンクするんじゃないか!?と思い立ち、まずはやってみよう!と。
帰社後にすぐに製造所に電話。
販売と商品企画の許可をお話1つでご快諾いただき、すぐに商品開発に取り組みました。
出汁パックの製造所であるメーカーさんは、長年「おいしいだしパック」の製造に取り組まれてきた愛媛県松山の企業でした。社員さん一人一人が、実際にお客様の声をいただくためにあの道後の商店街や地元のスーパーなどでの実演販売をされているそうで、対面販売をとても大切にされているところに我々との共通点を多く
感じとても共感いたしました。社長さんからも色々なお話を聞くことができました。
訪問から2週間後、まずは製造元のパッケージで一時的に販売を開始。そして半年後の2015年の秋に当社の「うまみあじだし」として、店頭での試飲を絡めた本格的な販売がはじまりました。
お出汁の取り方
だしパックでのお出汁の取り方はとても簡単です。
しかし、その味は本格的。
なんで?と思われる方が多いと思いますが、それは「本物の出汁原料を煮出しているから」なんですね。
築地にいる鰹節・昆布からお出汁を取るのが基本というのは、我々プロの料理人さんを相手に商売をさせていただいていますから、我々海苔屋も最低限のだしの取り方というのは理解しているというのは当たり前のことだと思います。
もちろん、きちんと取ったお出汁は本当に美味しい。けれどもほんの少しの手間がかかりますよね。
ご家庭で使われるお客様、もしくは海外からいらっしゃって出汁についてあまり知らないお客様も築地には多くいらっしゃっていますので、あくまでもプロ向けではなくご家庭での消費をされる方向けとしてこのだしパックのおいしさと便利さをお伝えするため、1回1回丁寧に使い方をこんな風にご説明しながら販売させていただいております。
- 500ccのお水を鍋に張って1包入れて火をかけます
- 約3分間沸騰するまで煮出してください
- 火を止めて蓋をし、1分間蒸らしてください
- 搾り取るようにしてだしパックを取り出します
- お出汁の完成です
5分もかからずにできてしまいますね!
とても簡単。
こいくち濃口は1包あたり500ccのお水を基準にしてください
商品紹介
うまみあじだし
人気の濃いめの味わいです。いりこ・さば・かつお・椎茸・昆布を粉末状にし、食塩や粉末醤油を加えて、だしパックに仕上げました。
あごあじだし
減塩無添加のタイプのすっきりした味わいです。焼塩と焙煎したあご(飛魚)を加えてますので、香ばしさを感じられる味わいに仕上げています。
どちらの商品も2023年11月末にパッケージのデザインリニューアルを行いました!
おいしいレシピ
だしパックは基本煮出して、だしを取るところからはじまります。当社製品「うまみあじだし」は下味がしっかりついていますので、お味噌汁にお使いの際はいつもより少なめの味噌で十分においしい味わいになります。
濃口
・うまみあじだし 1包
・水 500cc
薄口
・うまみあじだし 1包
・水 800cc
濃いめの煮物などのお料理をお作りの際は、醤油など他調味料の参考分量をこちらに記載しておきますので、ぜひご参考になさってくださいね。
煮物用だし
・あじだし 1包
・水 400cc
・みりん 大さじ2
・醤油 大さじ2
・砂糖 大さじ2
・酒 大さじ2
また、だしパックを破って中身の粉末を「調味料」としてもご使用いただけます。和風出汁が効いただしチャーハンや野菜炒めなどの炒め物、からあげの下味付けなどにも最適です。こちらも簡単に分量をこちらに記載させていただきます。
あじだしチャーハン
・あじだし 1包(調味料として破って使用してください)
・ごはん 茶碗2杯分
・ニンニク 1片
・たまご 2ケ
・ごま油 大さじ1
・醤油 少々
・玉ねぎ/ねぎ/ハムなどの具材お好み適量
当店の初代は長野県下諏訪の生まれで海が無い県で育ちました。海苔の目利きの礎になったのも、長野で生産されていた農作物の目利きでした。モノを見る目の良さだけではなく、小さな気づきや違った視点から判断すること、おいしさの基準の分別がつく確かな舌を持っていることが海苔商として求められる資質です。
海苔の生産地である各地方の府県は、海苔以外にも本当においしい食材や食品が山ほど揃っています。
海苔についての学びももちろん大切ですが、それ以外の食品や素材がどうやって作られ、どうやって流通されているか、それらを知ることは海苔商としての知見についても広げる事になると私は考えています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ぜひうまみあじだしお試しくださいね。